なんでもない私の、ひとつひとつ。

5歳と2歳の男の子を育児中。夫のこと、息子たちのこと、趣味のこと、思いついたこと。どこにでもいる主婦の徒然。リノベーションのブログ、始めました!

ランドセルが届いた日に思うこと

こんにちは。りかです。

 

7年前のことです。イオンがカルスポランドセルという、A4クリアファイルが入る大きさのランドセルを販売しました。当時、24色展開のランドセルが好調だったイオンがさらに仕掛けた策でした。

ランドセル業界にとって、これは大きな転機でした。

「天使のはね」で有名なセイバンは当初「1年生の小さな体を考えるとランドセルを大きくするべきではない」と、従来のランドセルの型に入る大きさの一回り小さいA4クリアファイルの付録をつけました。

 

あっという間にA4クリアファイルが入るランドセルはスタンダードになりました。セイバンも、少し遅れてA4クリアファイルが入るランドセルを販売するようになります。

 

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夫は、実父が経営する鞄の問屋で働いていました。

この変化は問屋にとっても、厳しいものでした。

それまで、ランドセルはその年に売れなければ、値崩れせずに次の年に売れるものでした。毎年、百貨店に卸すだけで売れるのです。

ところが、市場のランドセルの型が変わってしまえば、もう倉庫にあるものには誰も興味をもちません。

会社は、A4クリアファイルが入らないランドセルが売れなくなってきたことで、たくさんの不良在庫を抱えることになりました。

(現在ではランドセルに2018年モデル等、年数のモデル名がついたので型が変わらなくとも次の年に定価で売ることはできないですね。)

 

市場に合わせて問屋も考えなければならないのです。

 

A4クリアファイルが入るランドセルがスタンダードになりつつある時、会社の社員が人気のない色のランドセルを多く発注しました。セイバンのA4クリアファイルが入らないものです。誤発注だったようです。

 

夫は、このままでは会社がまずいと、ネットでランドセルを売ることを考えます。そのくらい会社は危うい状態でした。

かつては人気を博した旧型の商品を、少し値引きしてヤフオクで売り出しました。

 

ヤフオクで、ランドセルは売れに売れました。誤発注したランドセルは、あっという間に完売しました。

ブランドイメージを大事にしているセイバンは値引きを嫌いました。値引きをして売ってはいけないというのがセイバンの考えでした。他に値引きをしていた会社が無かったわけではありませんが、少し目立ってしまったんでしょうね。セイバンの子会社から、値下げをするのはやめるようにという通達があり、謝罪をしました。メーカーの意図にそぐわない、この売り方はまずかったんでしょうね。でも、この試みは夫の会社を救いました。

 

「それなら、値引きをしないで堂々とネットショップを始めよう。」

これが、現在ネットショップを経営している夫の原点です。会社の営業として働くかたわら、一人、隙間時間でネット事業を始めました。

在庫を売り切るという目的で始めたネット事業でしたが、2年目には年間3000万の売り上げがありました。今よりランドセルの売れる時期は遅かったですから10月〜3月くらいに一気に売れるのです。(とはいえ、会社員ですから給料には反映されなかったんですけどね。)

この時、仕事が楽しかったと夫は言います。

 

それでも、社長は夫を評価しませんでした。古い考えの人で、商売はface to faceでしかないと考えていました。業者とのパイプを繋いでおくことが、会社の安泰につながると信じてたようです。「PCにかじりつくのはサボりだ」その評価は夫を傷つけました。会社のために、と思ってやっていたことでしたから。

夫はそれでも、社長に評価されたかったのかもしれません。夜中まで、がむしゃらに商品をネットにアップし続けました。

 

会社の経営は全くうまくいっていませんでした。私は会社のことはよくわかりませんが、借金がたくさんありました。

社長はどんぶり勘定なところがありました。どのくらいかというと、社員が会社の鞄を盗み地元の路面で売り出していることに全く気がつかないくらい。

夫は、人・物・お金の管理に口を出すようになりましたが、社長は聞く耳をもたず、社長と夫の関係はどんどん悪くなっていきました。

私と夫の結婚式には出席しない!と言い出すくらい。(夫と義母さんが頭を下げて、結婚式に出るよう説得してくれました。)

 

社長は、何年も会社を守ってきたんです。何もわからない若造の夫に何がわかるか!という気持ちだったのでしょうか。口下手な社長です。どうのこうの説明は無しに、夫に

「会社を辞めてしまえ!」

何度もそう言いました。

 

私たちに子供が産まれて間もない頃、夫は会社を退職しようと決意しました。

ネットショップで革小物を売って独立しよう。その方が自分の未来は明るい。そう、考えたからです。

 

「ご入学おめでとうございます。これから、6年間の付き合いになります。どうぞ、よろしくお願い致します。」

夫が、ネットで売れたランドセルの納品書に添えていた言葉です。

馬鹿がつくほど真面目な夫は、退職を決めてから、その言葉を添えられなくなりました。自分はいなくても会社は存続していくんだから、6年の付き合いになるって書いたっていいじゃない。私はそう言いました。

 

夫が退職して間も無く、会社が倒産しました。

夫は役員でもなんでもない、安給料のいち社員だったのですが、銀行さんは後継ぎが会社を辞めたことを問題視したようです。お金を貸してくれませんでした。

 

夫はネットショップを始めましたが、ランドセル業界からはすっかり離れました。

ランドセルは単価が高いこと、大きさがあるから保管する倉庫がいることなど、お金が無い私たちが始めるにはリスクが大きかったからです。小さな革小物をこつこつと販売しました。

6畳一部屋から始まった、事業ですが私たち家族が食べていけるくらいには成長しました。

 

先日、来年小学生になる息子のランドセルが届きました。随分前に予約していたものです。流行りもののランドセルばかり扱ってきた夫ですが、息子と一緒に選んだランドセルは土屋鞄のとてもシンプルなものでした。とても綺麗な包装とメッセージ、思い出を残すための付録にこころが温まりました。

 

届いたランドセルを見て、夫が涙を流しました。

「こーちゃん、もう小学生なんだもんねぇ。大きくなったなぁ。」

ダンボールに書かれた「6年間よろしくね!」という文字をみつけ私がいいました。

「6年間よろしくだって。」

夫は涙を流しながら、うんうんと頷きました。

 

息子は、ニコニコしてランドセルを背負い、写真をとってとせがみました。何枚も写真をとって、ジジババに送りました。

少し泣いた夫ですが、その夜は上機嫌でした。

皆がこーちゃんの成長を喜び、笑顔になる夜でした。

ランドセルが届くだけで、こんなに嬉しい気持ちになるんですね。

あの頃、ランドセル販売に躍起になっていた夫には、ランドセルにこんなマジックがあることを知っていたかなぁ。私は、ぼんやりとそんなことを考えたりしています。